尊敬すべきならず者
「人間失格」「斜陽」「ヴィヨンの妻」といった巷では代表作などと頭の固い評価をつけられた太宰文学は読破したので、「晩年」「きりぎりす」のような作品を手に取ってみた。
この尊敬すべきならず者の書いた文章を読むと、大概心が沈んでしまって生への執着心なんてほったらかしにしてしまうのだが、今回は果たしてどうなるであろうか。
自分の心情の移ろいにたいへん興味がある。
今日も彼の文章にハッとなった。
芸術とは自然に対する切り口をいかに美しく見せるかどうか云々
といったことが書き連ねてあった。
そんなならず者は自身を「人間失格」と評して自殺に成功したわけだが、彼が最も人間らしさを持った人間であると感じるのは俺だけであろうか。
「ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ」という会話に始まり、絶望するな。では、失敬。で結ばれる生々しい人間味が描写された作品を読み終え、19歳のある日、泣いた。