普通の感性
亜熱帯の蒸し暑さと真上から照りつける太陽に襲われ、外出したくないとせがむ身体に無理を言って高雄市立博物館に足を運んだ。
道中、リードに繋がれた柴犬が窮屈なのに楽しそうに俺の足許を走り抜けて行った。
百道みたいな街並みだった。
中規模で落ち着いた雰囲気の博物館には、台湾国旗と並んでなぜか英国旗も掲げてあった。
NUDE展なるものの巡業がちょうど高雄に来ていて、シックな雰囲気のカウンターでチケットを受け取った。
専門的な内容でなければ、だいぶ英語が板についてきたような気がする。
幼稚な言葉を用いて言うと、NUDE展は大満足だった。
数多くの作品の中でも特に、ピカソの「Nude Woman with Necklace」と Max Ernst の「Man Shall Know Nothing of This」というふたつの作品に釘付けになり、踵が痛くなるまで食い入るように目を凝らして対峙した。
対峙したまではいいのだが、それらの絵の何によって足が疲れるまで引き止められたのか、ちっとも理解できなかった。
俺は万人が持つ普通の感性しか持っていないんじゃないか、と不安定な気持ちになった。
一度、まともにピントが合わなくなるくらいにキマった状態で警備員の目を盗みながら美術館に潜り込み、名だたるキチガイどもの作品を楽しんでみたい。
独りで遂行するのは、気がひける...