13112022

ほんの気まぐれで応募した日雇いの労働、それはつまり午前中の人々の監視、を終えて手渡された6,500円を握りしめて胡散臭いスーツ集団から抜け出し、ジュンク堂にヘッドスライディング、ずっとずっとここ2年ぐらい欲しかった植物の図鑑を買った。家に帰ったら、ジンを開けながら500ページ弱ほどもあるおニューの図鑑を最初から1ページずつ眺めるなどした。そして、今までに自然から学びながら、あるいは気まぐれな散歩の中で覚えてきた植物のページにいちいち付箋を貼っていった。いちいち。側から見ると甚だ狂者の所業であるけれど、ページに付箋が張っ付けてあることによって記憶探索スイッチがONになり、その植物に初めて出会った瞬間やその場所、花の芳香や色彩や容姿に感動したこと、名前を当てるにはここを見たらいいんだなと学んだ記憶が、これは走馬灯なんじゃないかと思ってしまうぐらいの勢いで湧き上がってくるから、俺にとっては必要不可欠な所業なんだと思う。少し勇気を出さないと買えない値段だからずっと渋っていた、というかその少しの勇気を出すのを面倒くさがっていて手を出していなかったけど、手に入れてよかった。幸せな時間が手に入った。これからも更なる幸せな時間が図鑑の中に織り込まれていくといいな。

 

本屋へ真っ直ぐに飛び込んだした今日の行動からして、未だどうにか、くすみや湾曲を知らぬ輝いた瞳を一部だけでも持ち続けられているようだなあ。お小遣いから本とかCDを買い漁っていた頃と同じじゃん、と思ってなんだか微笑ましかった。体裁的にはどう七変化しようとも、こんな直列回路みたいな思考回路を持ち続けていたい。