Entries from 2020-01-01 to 1 year

浮雲

せっかくウイスキーの美味い冬が来たっていうのに、何週間も太陽を見ていないせいで心がどんどん金属みたいに重くなっていって、それにつられて体も重くなっていく。このままアスファルトをも突き破る勢いで地面の底に沈んでいって、マグマと一体化するのも…

もうかれこれ3年ぐらいの付き合いになる友達と、だいぶ涼しくなったね、なんて会話を交わしながら海辺を走らせてパルコに行った。それからふたりして唐突に寿司が食べたくなったから、はま寿司にも行った。日常生活では滅多に回転寿司に行かない俺は、約2年…

例えば車で信号待ちをしている時のような、他人に見られると恥ずかしいくらいの無の表情を曝け出している時に、人生で5本の指に入ろうかという面白いエピソードが唐突に出現してきて、隣の車窓からの視線を気にしながらひとりで笑っていることが結構ある。特…

ここ最近仲良くなった女性を初めて家に上げたら、「なんで本棚置かないの?」という、一人暮らしを始めて以来、鼓膜が馴化するほど幾度となく言われてきた言葉をまた聞かされる羽目になった。確かに机の上や窓台やカメラのドライボックスの上や押入れの中み…

夜明け

疾風を背に受けてぐんぐんと加速していくクルーズ船のデッキの頂上で、中学の友達と一緒になってワイワイガヤガヤとお喋りをしていた。デッキの頂上にいたはずなのに、見えていた景色はマストトップから辺りを見下ろしているかのようで、そのせいか向かって…

洗濯物を干しにベランダへ出ると久しぶりの突き抜けるような快晴で、カレーを食べに行きたくなった。いつからか、カレーと快晴は切っても切れぬ関係になっている。昼頃になってやっとベッドから抜け出して、道中で水を買って、真正面から突き刺さる太陽光と…

深酔

頭から深紅の液体が滴り落ちているような予感がして、額に手の平を当ててみる。けど何も付いていない。それでもまだ何かがポタポタポタポタと.....落ちてくる溢れ出す頭蓋骨のキャパシティを超えて! やばいやばい何かが漏れる。血か?これは? どっかで頭打…

レジスターに不恰好な半透明の仕切りが設置されたスーパーで買い物をしていた。頑固そうで他人との距離感を未だに掴めていなさそうなお爺さんが何も持たずにレジスターに向かって歩いて行ったかと思うと、一言、「煙草ちょうだい」と。そのままスタスタと帰…

無用の用

故郷でも疫病が蔓延してしまっていて、通ってた高校のすぐ近くの病院でも院内感染が起こったらしく、見えない敵は見えない角度から脆い人間の身体を蝕もうと企んでいる。ネットをたらたら眺めていると、高校の同級生の父親はこの疫病に葬られてしまったみた…

夜明け

映画のように完成され尽くしたストーリーの夢を見た。記憶はあてにならないから細かいところは忘れたけど。数あるデジャビュの夢のひとつ。回数を経るごとに話の完成度が高まっていく。日頃獲得しているがらくたみたいな経験は、ただのがらくたとして捨てら…

浮遊

意欲の湧いてこない日々が続いている。時計台の鐘が空間を打ち鳴らすような一定のサイクルで欲が出現してきては、一瞬の豊満を得て消えてゆく。その繰り返し。熱を帯びていない、客観的な生活。愚劣なマジョリティの流れに乗るなんてことは決してないが、心…

南からの香り

2020年2月29日現在、コロナと命名されし原核単細胞生物が地球を征服せんとし、アジア圏を中心にその生息域を拡大している。今日のLCCの発展や、明らかにこの星のキャパシティを超越した人口密度が助長し、拡散の速度たるや日本政府の想定より×10程であっただ…

06122019

坂本慎太郎を観た。桜坂セントラル。 楽しみにしていた彼の服装は、ライブ直前に話していたヨレヨレののTシャツじゃなくて、ヨレヨレのジャケットだった。 ライブの中盤頃になって、 「そのジャケットの下に来ている白いシャツは肌着なんじゃないか」 とか …

01122019

<インドで書き残したメモ、もしくはインドが俺に書き残したメモ> インドの人がストーリーにカレーを載せるとカレーだらけのストーリーになるのかな。スワイプを何回も繰り返してもカレー、カレー。スマホのマイクの中からカレーの匂いがこみ上げてきそう。…

無防備な自分を求めて

大好きな写真家に三井昌志という人がいて、この人がTwitterで 「あなたが遭遇した親切なインド人、正直なインド人」のエピソードを募集します! というツイートをしていて、皆それぞれが、インド愛を更に加熱させるきっかけとなったであろうエピソードを無数…

忘却

年間で本を幾冊も読んだり、好きな人のブログを無数に読み漁ったりして、その人たちが捨て身になって、身体をボロボロにしてまで俺らに伝えたかった言葉を全身で受け止めることができても、日を跨ぐと、いとも簡単に、その言葉を記憶の渦中から抜き出すこと…

日中、色々と用事をこなして、そのうちのひとつの用事は半ば失敗に終わって、ため息交じりに厚紙みたいな雲で覆われた空を眺めながらガラムを吸って、家へ帰ってベッドで独り、無の状態に陥っていると、またあいつが唐突に心臓を掌握してきて、シーツが濡れ…

帰省のはなし

今年も、毎年の例に漏れず故郷で年越しを迎えた。 中学の友達とは拉麺と焼き鳥を食べに行った。 拉麺は平日昼間でも行列が絶えないぐらいの人気店で、今回は大晦日に行ったのに1時間近く北風に晒されていた。普段はぬくぬくとした場所に住んでいるから、指先…