異国の高層で妄想

スコール後の蒸されるような空気にまとわりつかれながら、ぴしゃぴしゃと目的もなく彷徨う。

豪雨で湿ったアスファルトに反射するネオンの光が実に幻想的だ。

都会が魅せる、唯一の美貌。

それにツンとしたボロ屋台の激臭が交わると、郷土に帰ったような安堵感に再会する。

宿の前でタバコに火を点しながら、隣の男と言葉を交わした。

カラダを破滅へと追い込む其奴は、時に人々の架け橋となる。

喉に指を突っ込みながら幾度にもわたる嘔吐を試みる男性を、煙に包まれながら口だけで嘲笑し、眺める。

どうしようもないほど不憫な気持ちに陥って、ビールを買いにコンビニへ出かける。

宿に戻り、机と灰皿と椅子の置かれたシンプルなバルコニーでつまみを引っ掻く。

今度は、沈黙を貫く言葉を双方とも発しようとしない。

万に通じる言葉なんてものは、どこにも有りはしない。

歩道を忙しく歩き去る人々の頭を見下ろす。

ここから飛び込んだらどうなるだろうか。

焦燥が心臓を犯した。