狂人

南の国のお祭りに行った。

この日の雲は足取りが重そうで悲しみを引きずっていた。

 

お祭りに行くといつも、心底感極まった表情でマイクに噛み付き、爆音を鳴らす狂った旅人たちの姿に酔潰れる。

俺たちも狂人。

ある者たちは激しくぶつかり合って踊り狂い、ある者たちはニコチンとアルコールで両手がふさがっている。

ここは行き場を失ってしまった本能の楽園だ。

 

お昼を過ぎたあたりから、空も機嫌が直ったみたいだ。

南国の薄いビールがうねるように喉を通り抜けた。