40's のように

今日は湿度が跳ね上がっていて、何をするにも不快感が伴う日だった。

特にどこかに出かけるわけでもなく、今にも喚きだしそうな灰色の雲をちらちらと眺めながら小さな用事をいくつかこなした。

日が落ちた。

湿気を含んで冷たくなったベッドに横になりながら、Jack Kerouac の On the Road を読み進めた。

Fill Your Heart のピアノの旋律が、なんとかこの冷え切った空間を盛り上げようとしていた。

たとえ20年間血液を共有している自分の脳であろうと、秒針が1回進むうちに、そいつがどういう感情を突きつけてくるかは予想に窮する。

今回はどうやら、こんな感じだった。

ハイになりたい。

これには俺も大賛成だった。

机の引き出しから最近新調したボックスを掴み出し、おもむろにタバコを巻いた。

フィルターは使わなかった。

こんな衝動的な気分の夜に、フィルターなんて邪魔くさい。

炎が道のりの約半分をたどった頃、唐突に頭がグラつくのを感じ、ベランダの手すりに寄りかかった。

それまで物陰になっていて気がつかなかったが、やけに早足な雲越しに、ほとんど欠けのない美しい月がきらめいていた。

すべてが順調だった。