夜明け

映画のように完成され尽くしたストーリーの夢を見た。記憶はあてにならないから細かいところは忘れたけど。数あるデジャビュの夢のひとつ。回数を経るごとに話の完成度が高まっていく。日頃獲得しているがらくたみたいな経験は、ただのがらくたとして捨てられていくだけではなくて、丁寧にだか雑然にだか知らないが、何ひとつ欠けずに無意識の中に積み上げられていっているんだと思う。そうじゃないと、あんなロマンチックな夢が完成に近づいていく過程なんてものにこうして立ち会っていけている筈はない。泣いていた、夢の中で。完成されたもののみが持つ高貴な美しさに感化され、怖気付いて、泣いていた。こんな経験をするのは初めてだった。ストーリーにピリオドが打たれて目が覚めても、泣いていた。美しい朝だった。