夜明け

疾風を背に受けてぐんぐんと加速していくクルーズ船のデッキの頂上で、中学の友達と一緒になってワイワイガヤガヤとお喋りをしていた。デッキの頂上にいたはずなのに、見えていた景色はマストトップから辺りを見下ろしているかのようで、そのせいか向かってくる突風はより一層強烈に感じられた。そんなちっぽけな人間のことは意にも介せず、クルーズ船は手加減無しに加速していき、そのスピードが最高潮に到達したかと思われたその瞬間、目下の景色が窺えないほど高くて長い橋に差し掛かった。過剰に振り切ったスピードのせいか、橋の半ば程に差し掛かった瞬間、クルーズ船は欄干を突き抜けて橋の外へ飛び出してしまい、そのまま急降下を始めた。周りにいる皆が、間違いなく死に向かっている事実を察知して悲鳴をあげる中、俺はただただ奇声を発しながら、今度は下から突き上げてくる突風を体全体で受け止め、ジェットコースターに乗っているかのような気分でいた。ものすごい勢いで重力に引っ張られながら急降下を続けたクルーズ船は、船底から硬い地面に叩きつけられてバウンドし、次の瞬間空中で横転した。誰かが発した、最期に振り絞るような叫声が微かに耳を掠めていった。