もうかれこれ3年ぐらいの付き合いになる友達と、だいぶ涼しくなったね、なんて会話を交わしながら海辺を走らせてパルコに行った。それからふたりして唐突に寿司が食べたくなったから、はま寿司にも行った。日常生活では滅多に回転寿司に行かない俺は、約2年ぶりに口にしたサーモンの握りの旨さに衝撃を受けて、サーモンの脂が旨く感じられるラインと、気持ち悪く感じられるラインのギリギリのラインまでサーモンを注文した。友達も同じように久々に口にしたサーモンの旨さに衝撃を受けていて、炙りとろサーモンみたいなやつを注文していたけど、たらたらと流れてきた炙りとろサーモンには土方十四郎を彷彿とさせる量のマヨネーズがかけられていて、はま寿司のクソバイト野郎マジしっかりしろよ死ねよバーカこのマヨラー!!!って思いながら、マヨネーズが得意じゃない友達と一緒にサーモンの上に無造作に乗っけられた大量のマヨネーズを落としながらそれを食べた。サーモンに続いて注文したサンマも体内から快楽物質が溢れ出すほど旨くて、地球上における光りものの存在価値を再確認した。光りものよどうか頭の悪い人間の乱獲を免れて生き残ってくれと思った。年末帰省した時に、はま寿司のもっともっと上を行く味の光りものに出会えたら嬉しい。時系列が前後するけど、パルコではタリーズで適当に飲み物を頼んでずっと音楽の話をしていた。友達も俺も比較的幅広く音楽を吸収している方だとは思うけど、ふたりとも全くと言っていいほど音楽のルーツが異なっていて、友達はR&B、俺はPUNKといった感じだから、幅広いと言えども普段聴いている音楽はほとんど被りがない。かろうじて被っているのがLil PeepやXXXTENTACION、Juice Wrldみたいなもうくたばってしまったアーティストばかりで、彼らの死を嘆きながら残された音楽の価値をふたりで再確認し合った。友達は俺に、Angie Stone の『No More Rain』や、D'Angelo の『Brown Sugar』、Roy C の『She Used to Be My Lover』を教えてくれた。R&B界隈の人間からするとこれらの曲は基本中の基本で、俺が初めて聴いたことを知ったら心底驚かれるんだろうな。Sex Pistols の『God Save The Queen』を知らないと言われたら俺が「マジかよ!」って思うみたいに。家に帰ってYouTubeでちゃんと聴いてみると、『No More Rain』なんかは再生回数が2千万回手前までいってるだけあってえげつないほど素敵な曲で、紹介された曲が入っているアルバムを追加しておいた。俺は普段声の美しさには特に気を払わずに音楽を聴いているけど、今回やっと、声は楽器であると言っている人の気持ちを理解できたような気がした。俺は友達に、Melanie Faye の『It's a Moot Point』やFrank Ocean の『Nights』、Meltt の『Love Again』を紹介しておいた。深夜に聴くと、脳味噌が宇宙までぶっ飛んでしまうヤバいブツを。普段パソコンをいじりながらYouTubeで音楽を聴いていたら、優秀で身勝手な人工知能がおすすめに、インディーで自由で尖っていて浮世までは当然の如く浮遊してこないような音楽を提示してくれるようになった。Meltt なんかはそんな経緯で出逢ってしまったアーティストで、全容はよく知らないんだけどアルバムを耳が溶けそうになるまでリピートしている。そんな音楽を、将来の難聴のことなど意に介せずに、ヘッドフォンで爆音で流しながらすっかり涼しくなった夜道を歩いていくのがたまらない。暗闇に溶けて消え去っていくような感覚がたまらない。