XX082020 sunny blue

すっからかんの冷蔵庫を埋めるために昼過ぎに買い物に行って、帰ってきてから昼ご飯を食べ終えると夕方まで眠ってしまっていた。台風が過ぎ去ったばかりで、窓を目一杯押し開けると、数日ぶりに柔らかい太陽と色白な雲の薫りが鼻腔に充満するのを感じた。昨日と打って変わって何も感情を露にしない空を眺めながら、何も起こさなかった1日を茫と俯瞰した。空中キャンプをランダムで流す。都会に繰り出して酒瓶に殴られたい気分だ。

 

ネットで知り合った女性とLINEを交換して会話を続ける。いつもだったらこの辺りで適当にドライブでもして酒を買って帰って一緒に眠っているところだけど、俺たちが住む世界のルールは悪い人たちによって作り変えられてしまっていて、俺らはまだ互いの体温を知らない。

こうしてLINEでの会話が長引き過ぎているせいで、俺は彼女のことを知り過ぎている。俺が知らない部分の彼女が通知音とともに磨り減っていっているのが手に取るように分かる。知るという行為によって侵食された部分が全身に転移した時、その美しい魅力は唐突に崩れ去り、俺は彼女から目を逸らし始めるのが分かっている。彼女の内面や身体の隅々まで知り尽くしてしまった時、俺は彼女に失望してその存在を突き放してしまう予感がある。

何度同じことを繰り返せばいいんだ? こんな堂々巡り、ちっとも美しくない。汚染された都会の星空の方がよっぽど美しい。全部、暗闇が覆ってしまえばいい。

 

 

夜になる。ベランダからグラスを落とす妄想をする。