ホイアンナイト

僕らは完全に酔っていた。薄いアルコールによってか、真夜中特有の蒸し暑さによってか、あるいは他の何かによってかは、記憶が確かでないから思い出すことはできない。1泊5ドルくらいのゲストハウスの前に腰を下ろして、人生の足しになることのない話をして…

MFGD!

生きていた! 沈んでなんかいやしなかった! ピントが自分の内側に綺麗に合わさった。 方角、時間、言葉は押さえつけられた。 きっと、どうでもいいんだな。 右脳が醒めた。 エネルギーが、黄緑色をしたチャクラの流れが右脳を突き刺し、流れていった。 心臓…

闇雲

掻暮生活リズムの狂ってしまった近日のある丑の刻、次第に暗順応してきた眼球とやわらかな黄光とでもってドストエフスキーの『地下室の手記』を読み進めていた。初めて人の手に渡る本の匂いはどうしても好きになれないが、時間潰しにやむを得ず手に入れたも…

真夜中

なんでだろう、真夜中ベッドに横たわって音楽聴いてたら一生懸命覚えたこの歌詞とか一生懸命練習したギターのリフとかって何十年かしたら俺のものじゃなくなって焼き払われてしまうんだという本当に本当にしょうもない考えが頭の中に充満した。不安で不安で…

乱雑

生き物はいつか命が絶えるってことを認知したのは確か保育園の頃だった。 数多の会話を交わしたはずなのにその断片の記憶しかないけれど、悟ったように優しい目をしたおばあちゃんが息絶えたと聞いた時には、周りの人々の悲しみに囲まれながら独りでぼーっと…

雨の日

サマソニへ行こう。20周年らしい。 Tim Armstrong と対峙しよう。彼のレリックの効いた Gretsch は芸術的だ。 Oliver Sykes と対峙しよう。彼の漆黒の右腕は芸術的だ。 The1975 も実は観てみたかったり... 虚無で満ち満ちたスクロールの中に突如水色の光が飛…

庆祝?

正月の興奮冷めやらぬ福岡、乾燥しきった唇を切り裂く鉄風、厚着の媒介者ども。 本日の空は灰色、感情とシンクロできないイルミ、見慣れた足並み。 これからもいっしょに馬鹿騒ぎするであろう親しい友達や、はたまた必然的にもう一生目線が交わることがなく…

夜明け

まだ着こなし方のよくわからないスーツを身にまとって働いていると 後ろから誰かが無邪気な高い声で笑いながら左の肩をトントンと叩いてきた。 すぐに後ろを振り返ってみたけれど誰もいない。 すると今度は右の肩をトントンと叩かれた。 またすぐに後ろを振…

新世界

ここ1週間ぐらいで目の前に新しい世界が開けてきてとてもウレシイ!! Saul Leiter という写真家の存在を知った。 もうすぐ年が明けようとして、ヒトがせわしなく動き回るデパートの書店で。 初めて会う人に対しては、やけに改まったお辞儀をして、全く中身…

純粋な日々が欲しい

また、飛びたくなってきた。 今年の夏はほぼほぼ写真を撮ってばっかしだったから、次は全部独りで、 無心に行きたい場所に行って、けど寝坊したり面倒だったりで行かない時もあって、散々迷った挙句毎日おんなじもの食って、刺々しい太陽に殺られながらカフ…

異国の高層で妄想

スコール後の蒸されるような空気にまとわりつかれながら、ぴしゃぴしゃと目的もなく彷徨う。 豪雨で湿ったアスファルトに反射するネオンの光が実に幻想的だ。 都会が魅せる、唯一の美貌。 それにツンとしたボロ屋台の激臭が交わると、郷土に帰ったような安堵…

Red n White

ニッポンと兄弟の国の北の果て 淑やかなベールを身にまとった美しい女性たち 美しい瞳の奥に佇む気高さと慈愛 あなたのサリーは何色?? 常識なんかをぶち破る蒸し暑さ 身体中がビールを渇望している テナガザルが目の前を激しく横断 彼らとともに消え去りた…

精神良好

目が覚めた。珍しく朝食をたくさん食べた。 冬服を物色しに行った。南に居ても意外と凍える。 気に入ったものが見つけられなかった。結局ネットに頼る。 RAMONES を独り搔き鳴らした。調子が悪い日もある。 エールで喉を洗い流した。今日のは物腰が柔らかい…

夜明け

実家の玄関で、柴犬のレックスにご飯をあげている 彼の目の前にしゃがみ込み、ひたむきに舌を動かす表情を眺めている。 両親は腰に手を回し、こちらに柔らかな視線を送っている レックスが食べ終えると、俺は「あとで散歩に行こうね」と言った。 するとレッ…

狂人

南の国のお祭りに行った。 この日の雲は足取りが重そうで悲しみを引きずっていた。 お祭りに行くといつも、心底感極まった表情でマイクに噛み付き、爆音を鳴らす狂った旅人たちの姿に酔潰れる。 俺たちも狂人。 ある者たちは激しくぶつかり合って踊り狂い、…

Medan City

出国前はいつも、現地の交通事情についてネットで調べてしまう癖がある。 スワンナプームからチェンマイ行きの寝台列車に乗るためには、どの駅でMRTを乗り換えればいい? チェンマイ駅から旧市街に行くためにはどこでソンテウを捕まえればいい? 相場は? UB…

歪んだ世界

嫌になるほど整然とした首都の無音な街並みが歪んで眼に映る中 LUCKY STRIKE を深く吸い込みながら 隅田川沿いのゲストハウスに向かってとぼとぼと なんとか真っ直ぐに歩いていた。 首都ではカネで買われたような安い女が虚栄を張っていた。 隣には頭がから…

ノーフィルター

なぜ、見ず知らずの他人に引き連れられ、意味もなく群れ、全てを知ったような間抜けな顔をして、行動できるのだろうか。 おしゃべりな女性が持つ赤い旗に盲目的に引き寄せられつつ、大仏を見る。 水など飲みながら、やっぱりいいね、と一言。 何たる滑稽さ。…

ハタチになってから間もない真っ青に晴れ渡った夏の日、トロピカルビーチに MONOEYES のアコースティックライブを見に行った。 たしか Mexican Stand Off Tour という意味のわからない名前のついた対バンツアーの番外編としてツアー中に急遽発表され、急いで…

普通の感性

亜熱帯の蒸し暑さと真上から照りつける太陽に襲われ、外出したくないとせがむ身体に無理を言って高雄市立博物館に足を運んだ。 道中、リードに繋がれた柴犬が窮屈なのに楽しそうに俺の足許を走り抜けて行った。 百道みたいな街並みだった。 中規模で落ち着い…

あのクズどもから世界を奪い返す

ところどころネオンが切れたボロい桜坂セントラルに The BIrthday のライブに行ったのをなぜだか思い出した。風の強い日だったような気がする。 そうだ、ライブハウスで泡盛がカップに注ぎ込まれる光景を見て、なんと素晴らしいハコなんだと思ったのがここだ…

アクシデント

車で事故ったことが、2回ある。 といっても俺が運転していたわけではないのだが。 1度目は、地元のスタジオアリスの目の前で母が原付にポンとぶつけた。 七五三の写真を受け取りに行っていたはずだから、おそらく5歳の頃だろう。 水色のMOCOの助手席にブカブ…

尊敬すべきならず者

「人間失格」「斜陽」「ヴィヨンの妻」といった巷では代表作などと頭の固い評価をつけられた太宰文学は読破したので、「晩年」「きりぎりす」のような作品を手に取ってみた。 この尊敬すべきならず者の書いた文章を読むと、大概心が沈んでしまって生への執着…

逃避先にて

スマトラ島の都市、メダンに行ってきた。 また逃避だ。 しかし絵の具をぜんぶ混ぜて作り上げたような混沌とした世界に身を投げると、皆と同じ方向に顔を向けてしまっている遣る瀬無さから解放された気分になって笑みがこぼれる。 まだ勝手がわからず彷徨う俺…